時間をかけて丁寧につくる

わさだ工務店の家づくりに興味をもってくださったお客様と、まずお話しさせていただくのは、社長である私です。私たちが建てるのは多くても年間10棟。一人一人のお客様とじっくり向き合って建てるには、これ以上棟数を増やしてはならないと思っています。

お客様と十分お話ができるだけの時間をとっているのは、ある言葉を絶対に聞きたくないと思っているから。それは「どうして言ってくれなかったの?」という言葉です。

 

「言ってくれなかった」はなぜ起きる?

具体例をあげて説明しましょう。次の文章を読んでみてください。

『Aさんはある工務店と契約を結びました。プランの際にはリビングの南側に掃出し窓、東側に腰窓をつくることになっていました。工事が始まり、建築現場を訪れたAさんは、腰窓の部分を見て、ここを出窓にしたら素敵だなと思いつきました。そこで担当者に希望を伝えて出窓に変更してもらい、追加費用として10万円が加算されました。』

一見すると、施主側の希望で追加になったのだから、追加料金を支払うのが当然のように思えますが、私の目には工務店の提案不足、もっと悪く考えれば、追加料金を得るための手段とさえ映ります。

その理由は、プロであるならば、最初に敷地を見てプランを引いた時点で、「ここに出窓があると引き立つな」と気づかないわけがないからです。気づいているのに言わないのは、施主に対する裏切りとまでは言わないまでも、誠意のなさを感じます。また、もし仮にその工務店が本当に気づかなかったのだとしたら、それはそれでちゃんとした建物が建つのか心配になってしまいます。

何を言いたいかというと、お客様が後になって「言ってくれなかった」と感じるケースは、建築する側が「わかっていたのに言わなかった」ケースが、かなり多いということです。では、なぜそのようなことが起きるのでしょうか?

 

依頼者(お客様)と施工者(建築会社)のギャップ

注文住宅を建てる―それは、多くの人にとって一生に一度あるかないかという体験です。当然ながら、建築の経験はゼロに近い人がほとんどです。一方、住宅の建築会社は建てるのが仕事ですから、膨大な経験を積んでいます。一棟一棟に時間をかけるわさだ工務店でも、百数十棟という建築事例をもっています。この圧倒的な経験値の差が、じつはギャップのもと。建築会社にとっての当たり前と、施主が思う当たり前との間に開きがありすぎ、たとえ悪気はなくても「言ってくれなかった」と思われるようなケースが起こりやすいのです。

先ほど挙げた出窓の例を振り返ってみましょう。おそらくこの工務店は、プランの段階で出窓の可能性を考えたと思います。けれども「図面を見たお施主さんが、何も言わないのだから、要らないのだろう」と判断したのです。施主は出窓が不要だから何も言わなかったのではなく、図面では気づくことができないのだ、ということに対する配慮が欠けていました。

 

大切なのは、互いの信頼

建てる側と依頼する側との間に横たわるギャップ。これを解消するためには、時間をかけてとことんまで話し合うしかないと、私は考えています。だから、話し合いの場でお客様が「○○をしたい」とおっしゃった時には、「どうしてそうしたいのですか?」と食い下がることも往々にしてあります。それは決してお客様が希望されていることを嫌がっているわけではなく、正しく理解したいと思っているからなのです。お客様が本当に求めておられることが何かを掴むことができれば、特に希望を伺っていない箇所に関しても、こちらから何かを提案することができます。それが注文住宅の真の醍醐味であり、お客様の満足にもつながると考えます。

また、施工中も何度もお客様を訪ねて問題点がないかをお聞きし、心配を安心に変える努力をしています。図面で見た時と、実際に立体的になってきた時ではお客様の感じ方にも違いが出ます。何度もお会いして心を通わせ、意見をすり合わせることで、満足度の高い家づくりに近づけていきます。

大切なのは「互いの納得」。お客様に必要なすべての情報をわかりやすく説明し、納得していただくこと。私たちがお客様の希望されていることをよく把握し、納得した上で現場に臨むこと。この2つの「納得」があって初めて、双方が一緒になって楽しく家づくりができると信じています。

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