木は日本人にとって家族のような存在

私の故郷は、トトロの森で有名な大分県佐伯市宇目町という山里です。大分市内に引っ越してからも、両親に連れられてしょっちゅう田舎に帰っていたせいか、自然に囲まれていないと、どうもお尻がムズムズするようで落ち着きません(笑)。私にとって森は、安心を与えてくれる家族のようなものなのです。

でもそれって、特別なことではないと思います。私のように田舎に故郷がなくても、木がいっぱいあるところに行くと、なんとも言えないやすらぎと、懐かしさを感じる人は多いのではないでしょうか。ちょっと大胆な意見かもしれませんが、私は日本人のほとんどは、植物に囲まれている時に、もっとも気分が落ち着くのではないかと思っています。そして、その自分の感覚を信じて取り組んでいるのが、木をふんだんに使い、素のままの木の美しさをデザインに盛り込んだ家づくりです。

 

木は天然のエアーコンディショナー

わさだ工務店では、柱や土台といった構造材はもちろん、内装材、そして押入れやクロゼットにまで、無垢の木を使うことをおすすめしています。なぜなら、無垢の木は呼吸し続け、湿度の高い梅雨には湿気を吸い、乾いた季節には水分を吐き出して、家の中の空気を快適に保ってくれるからです。木造の家の快適さは、日本の気候風土に合わせ、長い年月をかけて生み出されたもの。この列島においては、もっとも理に適った工法だと私は思います。

また、わさだ工務店では、木材は自然乾燥のものか、極めて自然乾燥に近い「大分方式乾燥材」を用います。その理由ははっきりしています。樹は家の材になってからも、これまで森で生きてきたのと同じだけの寿命を保つと言われています。しかし、そのためにはできるだけ健康な状態のまま、木材にしなくてはなりません。強制的に短時間で乾燥させる人工乾燥よりも、太陽の光と風の中、ゆっくりと時間をかけて乾燥させる方が樹のために良いことは、誰の目にも明らか。それで、わさだ工務店では天然乾燥という方法を選択しているのです。

天然乾燥木材は、木目の美しさとねばり強さで、住まいに安らぎと落ち着きをもたらします。時間をかけて自然乾燥されたこの木材は、木の自然な強度と耐久性を高め、長年にわたってその美しさを維持します。

こうしてじっくり熟成させた材木とともに使うのは、土、しっくい、紙、石などの自然素材。四季折々に美しく変化する日本の町並みには、自然界にあるもので建てた家が一番よく似合うと私は思います。

木材にも「物語」があります

昔、日本には孫のために木を植えるという習慣がありました。平均寿命が短かった頃の話ですから、大抵の場合、孫が家を建てる頃にはおじいさんはもう居ません。それでも、孫が立派な普請をするのを楽しみに、若い苗木を願いをこめて植えたのです。ところでお父さんはどうしていたと思いますか?正解は、祖父が孫のために植えた木を、大切に管理していました。こうして家族が家族を思う愛情の中で、山は整備され、良質の木材が育っていたのです。

とても良い話だと思いませんか?昔の人は木をただの木として扱うのではなく、すくすく伸びる若木に、子供の健やかな成長を託したのですね。

そんな素敵な「物語」を取り戻したいと、大分県下の若手工務店経営者たちが集まって2011年に結成したのが「木繋会(きづかい)」です。会の目的は、木材の産地とお客様とを我々工務店が結び、素性のはっきりわかっている木で家づくりをしていただこうというものです。大黒柱になる木や、土台になる木を選んでいただき、伐採した後にはまた苗木を植えて、大きな循環の中で育まれていく森の命を実感していただければいいな、と思っています。

木が大好きで、どうせなら外国の木ではなく、日本の、しかも地元で生まれ育った木で家づくりをしたいなとお考えの大分県民のみなさん、ぜひ私たちに声をかけてくださいね!

ページトップへ