この部材の名前を「猿(さる)」と「猫(ねこ)」といいます。
木製の雨戸などの戸締りの際に使用される、建具の伝統的な施錠部材です。
写真のものは、「猿」を上に押し上げ、あらかじめ鴨居に彫られた角穴に差し込み、押し上げたままの状態の「猿」を保つために「猫」を右に移動させて固定します。
そうすると引き戸が施錠されるのです。
昨年竣工した、湯布院のお客様のトイレ引き戸に採用しました。
動物の猿は、一度握ったものはなかなか放さない習性があるので、「戸締り」を意味する言葉として生まれたようです。
このように、建築用語には動物などの名前に由来する言葉が数多くあります。
例えば、牛梁(うしばり)、虎斑(とらふ)、卯立(うだつ)、雲龍紙(うんりゅうし)、蛇口(じゃぐち)、馬乗り(うまのり)、鳥の子(とりのこ)、犬走り(いぬばしり)、蟻継ぎ(ありつぎ)、蝶番(ちょうばん)、蛤端(はまぐりば)、海鼠壁(なまこかべ)、螻羽(けらば)など…
昔の人の発想は豊かで奥ゆかしいですね。
さて、今年の干支は「亥(猪)」。
「『猪おどし(ししおどし)』があるじゃない」と思って調べてみたら、「鹿おどし」が正しい書き方でした。